百田尚樹の原作小説「海賊と呼ばれた男」を見た感想や見どころを紹介します
百田尚樹の小説は面白いかつまらないか、感想と評価もご紹介します
原作小説。海賊と呼ばれた男のあらすじとネタバレ
出光の創業者の実話で、社員を家族と考えリーダーはこうあるべきだと考えさせられます。戦時中から戦後をたくましく純粋に生き抜く人々は、現代人にはない互いを思いやる精神があり、とても感動的です。
働くことの大切さや楽しむことを自分自身も頑張ろうと前向きになれる小説です。
日本各地に出光に関係する石油施設がいまだに残っているので、旅行先で立ち寄る楽しみもあります。現代でも石油をめぐる争いがたえないことを考えると、あの時代を強く生き抜いた方々のお陰で、豊かな日本があるのだと感慨深いです。
戦後売る石油がなかったので、当然仕事もなかった状況でも、戻ってきた社員を温かくむかえて、新しくラジオの修理を請け負うなど、一からの事業も臆することなく挑戦していきます。
GHQの言いなりになる同業者をはたに、きつくつらい仕事も弱音をはかないで社員が一丸となり、立ち直っていきます。
ずっと支えてきた奥さまとの間には残念ながらお子さんが恵まれません。奥さま自ら、後継者を残さなくてはいけないと言う理由で家を出ます。
その後再婚された主人公は子供にも恵まれます。みんなが自分のことよりも周りの幸せを考えるから今も、出光があるのだと思います。
海賊と呼ばれた男。原作あらすじとネタバレ
物語は、昭和20年の日本の敗戦によって商売の全てを失った、国岡商店店主・国岡鐵三が、再び店を再建しようと立ち上がるところから始まります。
日本に扱い商品の石油自体がなく、慣れないラジオ修理の仕事で糊口を凌ぐ店の状態でも、鐵三は幹部連中に宣言します。
「馘首はならん!」
そんな店主に率いられ、店員達は死に物狂いで働きます。
石油輸入再開の条件としてGHQから提案された元海軍の石油タンクの底溜まり原油の組み出しは、荒くれの海軍軍人さえも敬遠する過酷な仕事です。
石油業界の誰もが二の足を踏む中、国岡商店の店員達が果敢に立ち向かいます。
それは、石油輸入再開が日本にとって必要だという鐵三の無私の精神を知っているからです。
商売人を目指す鐵三は若い頃から扱い商品として石油に着目し、苦難の中で試行錯誤を繰り返し、
安く消費者にそれを届ける為の問屋抜き直販方式を具体化した伝馬船販売によって、その激しい働き振りから「海賊」と同業者に呼ばれる程に成功します。
その後、国内は勿論、海外においてもその活躍は群を抜き、既存の同業業界や戦争遂行の為の統制経済を推進する国からの圧力が加えられますが、国民国家の為に働く姿勢を貫きます。
戦前から続くもう一つの戦いの相手は、世界の石油を牛耳る欧米系石油メジャーでした。
特に戦後、日本石油業界を傘下に収めるべく、日本の石油会社への資本注入を石油供給の条件としたメジャーとの闘いは壮絶を極め、
イランからの原油輸入を巡って英国海軍との攻防にまで発展します。
イラン原油輸入に成功し、単なる一石油会社が、日本の石油業界のみならず、日本や英国政府相手の戦いに勝利したのです。
海賊と呼ばれた男の結末ネタバレ。
一貫して推し進めてきた消費者の為の石油販売の総仕上げとして、
メジャー資本の入らない石油流通ルートを確立する為に、鐵三はさらに産油国からの直接原油輸入と原油を精製する製油所建設を成功させます。
メジャーの大資本抜きでのこの成功に、誰もが度肝を抜かれました。
この時、鐵三71歳。
自己の利益ではなく、国民と国の利益優先の姿勢はこの後も変わりなく、それに反する施策には徹底的に抗った鐵三も、95歳でその波乱万丈の生涯を閉じます。
国岡鐵造が学生時代から思い描いた商人のあり方を、
日田重太郎という鐵造の一生の恩師となる人、
鐵造を支える家族や、社員とともに実現していく物語です。
戦後、何も残っていない日本をまた復興させるため、
1人の人間として、店員誰一人も馘首せず、赤字という
底辺から少しずつ自分の会社、そして日本をも変えていきます。
時には、GHQにも、そして時には日本政府にも、
そして時にはアメリカのセブン・シスターズと言われる
石油の大手企業相手に、そして時にはイギリス政府までも敵として戦っていく日本の誇りと呼べる男の広大なストーリーです。
鐵造は70、80歳になっても元気があり、
会社の社長という座は退いたものの、まだ小さい店だった頃の名残として、店主という形でまた新しい第2の役目を果たしていきます。
昔から、目があまり良くなく、度の強いメガネを掛けていましたが、やはり歳をとることでさらに視力が衰え、目の病気にかかってしまいました。
それでもその時代の最先端の技術を使って、
視力を回復することができ、そこで鐵造は人生で一番の景色を見ることが出来ました。
そして、時が経ち鐵造の恩師である日田重太郎が亡くなり悲しさがある中、さらに会社を育て、
自分の人生を悔いなく過ごし、
最後は好きな名画の前で静かに亡くなっていきます。
海賊と呼ばれた男の感想。面白いかつまらないか評価は。
海賊と呼ばれた男の感想です
面白いかつまらないか評価はどうなってるでしょうか
原作を読んでから映画を観たけど面白い
戦後GHQに支配され、石油が全く手に入らない状況で、政府から戦艦の船底に残っている石油を回収するように言われます。
他のメーカーが受け入れない中で、一致団結して作業に当たります。命の危険があるなかで、上司も部下もなく船底に潜り成し遂げたところがすごく感動的なシーンでした。
プライドをもって仕事をすること、社員を信じて任せること、家族と思いひとりひとりの部下に接していたからこそできていた信頼関係が、今の社会には果たしてあるのでしょうか。
あの当時に比べると、現代は豊かになり、物が溢れています。それが当たり前だと疑問にも感じない私たちは、本当は貧しいのだと思います。これからは豊かな心を育む様な教育が必要だと思います。
私は本を読んでから、映画を見ましたが、岡田さんが主人公のカリスマ性や風格を見事に表現されていて、期待以上でした。
小説はかなり読みごたえのあるページ数ですが、私は2日間で読み上げました。
百田さんの小説は事実をしっかり調べ上げているので、引き込まれてしまうのだと思います。
小説を読んでから映画を見るのがおすすめですが、読書が苦手な方は映画だけでも見ていただきたいです。
綾瀬はるかさんの良妻ぶりも心を打たれます。
海賊と呼ばれた男の印象的なシーンは面白い
この小説で私が最も印象に残る場面は、鐵三の最大の協力者・日田重太郎が、国岡商店立ち上げの為の資金を融通するところです。
鐵三と日田重太郎との縁は、重太郎がその息子・重一の家庭教師に鐵三を雇った事から深くなります。
鐵三の教え方は、雇われている事の遠慮などはない大変厳しいものでした。
最初そのあまりの厳しさに音を上げた重一に泣き付かれた母親が鐵三を首にしますが、重太郎は妻を叱り元に戻します。
半年後、甘やかされていた重一が見違えるほどにしっかりと成長したのを見た重太郎は、鐵三の人を育てる才能に気が付きます。(上巻218頁)
さらに重太郎が鐵三の資質を認めたのは、鐵三が就職する時の一件でした。
鐵三が学んだ神戸高等商業学校は現在でいえば大学にあたり、入学は明治38年です。
この時代の大学生はエリート中のエリートで、卒業後は国家の官吏や政治家になったり、大会社で働くのが当たり前でした。
鐵三も当時の新進気鋭の商社・鈴木商店(後には財閥系商社・三井物産を抜いて年商日本一になる)を受験しますが、
何かの手違いで採用通知が遅れたために、従業員三人の酒井商会に就職を決めます。しかしその直後に鈴木商店からの採用通知が届きます。
就職の報告に訪れた鐵三に重太郎が鈴木商店の方が良いのではと尋ねます。
鐵三は、大会社の歯車になるより、純朴で懸命に働く酒井商店の店主の下で仕事を覚え、思う存分自分の腕を振るってみたいと答えます。
さらに酒井商店との出会いに運命を感じ、また一度入社を受け入れてくれた酒井商店の店主に、今更鈴木商店に行くとは絶対に言えないと言いました。
それを聞いた重太郎は、黙って頷きました。(上巻223~225頁)
そして酒井商店で大活躍、成功した鐵三が独立を考え始めますが資金がありません。思い悩む鐵三に重太郎が声を掛けます。
資金がない事を認めた鐵三に重太郎は、別宅を売った金を鐵三に渡す事を告げます。
熟考した末それを受ける事にして、返済について話そうとする鐵三に重太郎が言います。
「返済て何のことや。わしは国岡はんにお金貸すとは言うてへんで。あげると言うたんや」重太郎はさらに続けます。
「君の志にあげるんや」(上巻254頁)
日田重太郎の鐵三に対する有形無形の無償の援助は重太郎が逝くまで続きます。それは一言で言えば「惚れた」以外に言い様がないと私は思うのです。
鐵三の真剣で真摯な生き方には、人の心を震わせるエネルギーがあったのだと思います。
だから人生の色々な場面で、鐵三を助ける協力者が数多出現します。
それはGHQの担当官であったり、取引先の国内銀行支店長だったり、石油メジャーの御膝的米国の銀行・バンクオブアメリカの副社長だったりします。
彼らは、鐵三の仕事に対する情熱が自己の利益の為ではなく、消費者や国民や国など公共の為にある事に感応した人達でした。
将来のこの様な鐵三像を予感したから、日田重太郎はは鐵三に見返りを求めない支援を行ったのでしょう。
そして日野重太郎の存在があればこそ、そんな鐵三の人間性が作りあげられたのに違いありません。
人付き合いの下手な、ややもするとそれを面倒臭くさえ感じてしまう私にとって、
鐵三と様々な人との深い繋がりは、驚きであり不可思議であり恐怖さえ感じながら、と共にその素晴らしさに圧倒された読後感でした。
原作小説の書き出し。冒頭が面白い
1ページの4行目から。
鐵造が造った石油タンクを海軍に貸し、
その後のタンクを見に行った時、鐵造が海軍大佐と会い
香港航空基地に誘われたときのことです。
零戦などを見ていた鐵造の前を通った若い兵士に挨拶をした時、彼は綺麗な海軍式の敬礼をしました。
ここからが百田尚樹の本を読んでいる人にはたまらない文が書かれているのです。
綺麗な敬礼をした兵士の名札を鐵造が見た時そこには、宮部と書いてあったのです。
宮部とは、百田尚樹が2006年に出版した、
「永遠の0」という本の主人公の名前です。
「海賊と呼ばれた男」は実話ですが、「永遠の0」は実話を含めた物語で、宮部という男は実在しない
自分の作品に、前の作品を入れて見たいという百田尚樹の想いからだとは思いますが、それがまた百田尚樹ファンにはたまらなく、感動するものでした。
そしてもう一つ有ります。
鐵造が初めて自分の会社を作り、業績が上がらず赤字で日田が融資してくれたお金も無くなったときに鐵造が日田に謝りに行った場面でした。
会社を潰すと言った鐵造に日田が言った言葉でした。
「3年やってあかんかったら、5年やってみいや。5年であかんかったら、10年やってみいや。なぁ、とことんやってみようや。わしも精一杯応援する。それでも、どうしてもあかなんだら…一緒に乞食しようや。」
という言葉が、日田の鐵造に対する信頼が厚いと思い、
感動しました。
以上、海賊と呼ばれた男の原作本のあらすじネタバレと結末。百田尚樹の小説は面白いかつまらないか評価はでした